コロンビアコーヒーとは?

コロンビアのこと

「コロンビアといえば、コーヒー!!」というイメージが、多くの人には強いのではないでしょうか。

「コロンビアコーヒー」とは、その名のとおり南米コロンビアで生産されたコーヒーのことで、ブラジル、ベトナムに次いで世界第3位の生産量を誇ります。

甘い香りと華やかな酸味、豊かなコクがあり、バランスが良い特徴があります。マイルドコーヒーの代名詞ですね。スーパーで売られているものやカフェででてくる「ブレンド」の多くに、コロンビア豆が使われています。

・・・と、ここまでは、多くの人が知っていると思いますが、国を挙げての取り組み、産地による違いなど、非常に奥深いものがあります。

知らず知らずのうちに飲んでいるけど、あまりよく知らない人も多いのではないでしょうか?

わたしは、コロンビアの様々な産地のコーヒーを毎日飲み、首都ボゴタの教育機関で学び、生産者や流通関係者と一緒に働いてきました。この知見を活かして、歴史、豆や産地の特徴、どう生産されているのか、おすすめの飲み方、などを紹介していきます。

本文中は、私が農園を訪問して実際に撮影した写真やコロンビア生産者連合会(FNC)の規定やデータを使っています。

この記事に関心があると思われる人

・コロンビアコーヒーが好き、または関心がある人

・スペシャルティコーヒーが好きな人

・コロンビアコーヒーを販売している人

・コロンビアに行ってみたい人

・コーヒーの産地に興味のある人

コロンビアコーヒーの歴史

コロンビアにコーヒーが伝わった経緯にはいくつかの所説あるようですが、18世紀ごろコーヒー苗が、カリブ諸島からお隣のベネズエラを経由して持ち込まれたとされています。イエズス会の宣教師が、信者にコーヒーを植えることを推奨したことから商業的な栽培が拡大していきました。

コロンビアのコーヒーが世界市場に本格的に登場したのは19世紀後半からで、欧米が主要な輸出先となりました。幾度にもわたる国際価格の下落や国内外での紛争による困難を乗り越え、小規模農家が増加し、20世紀初頭には全国的に生産地が開拓されていきました。

1927年には「コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)」が設立され、国策としてコーヒーの基幹産業化が図られています。FNCは、農業生産者の協同組合のような非営利団体ですが、国家予算の「国家コーヒー基金」を運用する役割を負い、国内の政財界にとって大きな影響力を有しています。コロンビアコーヒーの輸出振興、品質管理、技術支援、流通強化、社会開発、など多岐にわたる事業を行っております。

FNCの努力もあり、順調にコーヒー産業が拡大し、1960年代からブラジルに次ぐ世界第2位の生産量を誇るようになりました。国際市場での競争が激化する中でも世界有数のコーヒー生産国として持続的な成長を遂げたのです。以来、コーヒーはコロンビアの文化的象徴としても認知されています。

コロンビア中部に広がる「コーヒー産地の文化的景観」は、2011年の第35回ユネスコ世界遺産委員会において、持続的で世界的なコーヒー生産の顕著な例が見られることが評価され、世界文化遺産に登録されました。主にこの地域に位置するカルダス県、キンディオ県、リサラルダ県の3つの地域では、国道沿いからすぐ見える美しいコーヒー農園が広がっています。国道を車で走っていると、つい何度も停車して写真を撮りたくなります。

この地域ではコーヒー生産量も国内有数の規模ですが、それ以外にも地域の産官学が一体となって、コーヒーカルチャーの保存と継承、コーヒーツーリズムの振興なども盛んに行われています。ちなみに、このエリアのキンディオ県モンテネグロの町にあるコーヒーのテーマパーク「国立コーヒー公園(Parque del Café)」には、年間100万人以上が来園する人気観光地となっています。

これらの古い歴史から受け継がれ、現在、56万世帯以上のコーヒー生産者と約300万人(全人口の約6%)の人々が、直接もしくは間接的に日々の収入をコーヒー産業から得ています。

コロンビアコーヒー農園の景観(バジェデルカウカ県)

コロンビアコーヒー豆の特徴

コーヒー豆の品種は、大きく分けるとアラビカ種ロブスタ種(カネフォラ)に分類されます。簡単に言うと、アラビカ種の方が香りよく酸味や甘味があって、インスタントや加工用コーヒーなどに使われる苦味の強いロブスタ種より高品種です。他方、病虫害に弱く、生産性がより低く栽培が難しいのもアラビカ種の特徴です。だからアラビカ種の方が高値となります。

コロンビアコーヒーは、ほぼ全量アラビカで、ブラジルに次いで世界第2位の生産量を誇ります。基本的にコロンビアではロブスタ種の許可のない栽培は禁じられています。

コロンビアで初めに栽培されたのは、ティピカ種でしたが、その後、ブルボン種やカトゥーラ種が栽培されました。しかし、世界的に流行した病気(さび病)によって、生産量が激減したため、改良品種の開発が急務となりました。

このため、FNC傘下の研究機関(セニカフェ:CENICAFE)が、カトゥーラ種を土台に病気に強い品種と掛け合わせの研究を繰り返し、(古い順に)コロンビア種、カスティージョ種、セニカフェ・ウノ(CENICAFE1)種という品種が誕生してきました。これらは、さび病耐性・生産性・カップ品質とも高いものとなりました。現在最も一般的なコロンビアコーヒーの多くは、カスティージョ種ですが、セニカフェ・ウノ種がこれから増えていくものと思います。

現在コロンビアで最も栽培量の多いカスティージョ種(アンティオキア県)

ところで、コーヒー豆は赤い実を収穫した後に、生豆を取り出すまで「精製」という工程があります。実の皮を剥き中のタネを取り出して、乾燥・脱穀することで、焙煎する前の生豆となり、生豆を焙煎することで私たちがよく見かけるコーヒー豆となります。この精製方法は主に2つに分類され、①収穫した実をそのまま乾燥させ、乾いたら皮ごとまとめて脱穀して生豆を取り出す「ナチュラル」式と、②収穫した実をすぐに脱殻し、出てきた種子を洗う「水洗(ウォッシュト)」式、があります。

コロンビアの場合、一般的には水洗式を採用しており、「アラビカ種x水洗式」の生産量は世界一です。水洗式は、豊富な水量ときれいな水がある場所でこそできる精製方法です。水洗式のコーヒーは、生産者の手間とコストはかかりますが、「クセのない、透き通ったクリアな味わい」となるため、コロンビアコーヒーの特徴を生み出しています。

ただし、FNC推奨の上記3品種以外に、あえて病虫害に弱く収量も少ない希少品種を扱い、「スペシャルティコーヒー」の生産にチャレンジする限られた一部の農家もいます。わたしが実際に見てきた中では、ゲイシャ種、タビ種、ハバ種、ブルボン種、パカマラ種などさまざまです。さらに、彼らは、精製方法も、ナチュラル式にしたり、発酵過程に独自の工夫を加えたり、より高品質、よりユニークな味づくりに挑戦し、高値の市場を目指しています。

これらスペシャルティコーヒーは、同じ農園・産地においても、もちろん全く異なる味わいが生まれるため、さらにコロンビアコーヒーの多様性を広げていることになります。

産地別の特徴

コロンビアを南北に縦断するアンデス山脈にある緑豊かな山岳高原地帯は、おいしいコーヒーづくりに欠かせない条件をクリアした稀少な土地といえます。地域によって雨季/乾期が異なるので、一年を通じてどこかしらでコーヒー豆が収穫できます。

FNCによると、コロンビアでは、標高800m~2300mくらいまで栽培されているとのことですが、わたしの訪問先は、1500~2000mの高原地帯が多かったです。高地では、気温が低くコーヒーの実はゆっくり育ちます。日中と夜間の気温差が大きく変化するため、この寒暖差が糖分の生成を促します。生豆に含まれる糖分の一部は焙煎される間に酸味となり、香り成分となります。糖分はコーヒーの酸味のもととなると同時に甘みも強くします。

高地であればあるほどこの傾向が進みますので、「低地産=低品質」ではありませんが、「高地産=高品質」であるのは確かです。中米産コーヒーなどのように、「標高」がそのまま格付けの基準になっている国もあります。

ちなみに、コロンビアの農園は、本当に山岳急斜面での栽培が多く、もちろん広大な平地でされているような機械化ができません。ですので、栽培管理や収穫は、すべて急勾配での手作業になり大変な労力が伴います。このような苦労を知ると、一粒も無駄にできませんよね。

コロンビアの産地は多様性に満ちていて、地域によって栽培時期や自然条件が異なります。大きく分けると南北に走る3つの山脈に沿って、FNCが定義した下図のように、北部・中部・南部と3つの地域に分類されています。収穫期に関しては、北部は年に1度だけですが、その他はたいてい本収穫(メインクロップ)とサブ収穫(「ミタカ」と呼ばれます)の2度になります。

最も一般的なカスティージョ種(水洗式)の場合、産地別にザックリと以下のような傾向があります:

  • 北部地域:全体的にボディが強く酸味も抑え気味で、中~深煎りでコクと甘さが際立つ
  • 中部地域:フローラルで優しい酸味が特徴的で、浅煎りにするとフルーティに
  • 南部地域:甘く柑橘系の際立つ酸味が特徴的で、浅~中煎りにおいて風味が引き立つ

多様なコロンビアのコーヒー産地と特徴

出展:Colombian Coffee Growers Federation(cafedecolombia.jp)

といっても、やはり同じ地域内でも気候・土壌など自然条件も異なり、とにかく広いので、県や市レベルの違いで味の違いや特徴も変わってきます。産地別に試し飲みしてみると味の違いが感じられますよ!

コロンビアコーヒーの格付け

コーヒーの格付け方法には各国とも違いがありますが、コロンビアでは、規格のふるい網で選別された生豆の大きさ(スクリーンサイズ)によって等級が規定されています。大きいものほどグレードが高いことになります。

よく、「コロンビアスプレモ」とか、「エクセルソ」とか商品名を見た人もいるのではないでしょうか。一般的に、輸出基準を満たすスクリーンサイズ14以上を「エクセルソ」、その内17以上が「スプレモ」という最高級の格付けがなされます。

下の表は、FNC規定によるコロンビアコーヒーのスクリーンサイズによる格付けです。1段階刻みで、もう少し細かい等級分けが行われています。

コロンビアコーヒーの等級(出展:FNC)

スクリーンサイズ (ふるい網のサイズ)等級の名称
18※スプレモ・プレミアム
17スプレモ
16エクセルソ・エクストラ
15エクセルソ・ヨーロッパ
14エクセルソ・UGQ
(※スクリーン(ふるい網)18で保持された生豆に、スクリーン14で保持された豆を5%許容したコーヒー生豆)

ちなみに、サイズだけで言うと、スクリーンサイズ16のエクセルソ・エクストラ以上(と貝殻型のピーベリー豆)のみがスペシャルティコーヒーとして取引きされます。スクリーンサイズ13以下の豆は、基準に満たないため、FNCの輸出審査ではじかれ、国内市場にまわります。

こうした格付けに加えて、生豆のプロファイルや認証などにより、厳選された高品質なコーヒーだけが日本へと届けられています。

コロンビアコーヒーおすすめの飲み方

コロンビアコーヒーは、産地別・等級・品種・精選方法の違いによって、色々な味わいが楽しめます。豆の特性にあわせて焙煎レベルを変えていくと、さらに多様な味や香りが楽しめます。個人的には、酸味の違いを楽しんで頂きたく、浅煎り~中煎りくらいから試してみるのがおすすめです。

また、他国産の豆とあわせた「ブレンドコーヒー」もおすすめです。ブレンドのベースやアクセントにもコロンビアコーヒーはよく合います。「コロンビアベース+ブラジル+エチオピア」といった華やか系王道パターンや、マンデリンとの組み合わせでリッチなコク深系も良いと思います。実際に多くの市販のブレンドコーヒーにおいて、コロンビアは多く使われています。

そして、フードとの相性もバツグン!

水洗式精製ならではの雑味がなくクリアな味わいを活かして、こんな組み合わせはいかがでしょうか?

・朝食にさっぱりした中煎りの南部産を、バタートーストやサンドイッチ+ハムエッグなどと
・午前中の会議や休憩時間に、あっさりした浅煎りの中部産をクラッカーなど軽スナックとともに
・ランチ後の一杯に、チョコレートや濃厚なデザートとともにコクのある深煎りの北部産を

コロンビアコーヒーとのフードペアリング

いかがでしたでしょうか?

「コロンビアコーヒー」だけで、様々な楽しみ方や奥の深さがあることが伝わってもらえればうれしいです。まだまだ書き足りないこともあり、これから少しずつ紹介していきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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